東京郊外の田園風景が広がる地域に建つ二世帯住宅である。親世帯(夫婦)と子世帯(夫婦+子供3人)の計7人が暮らす。1階に親世帯、1階の一部と2階に子世帯が住む構成である。
予算が少なかったため、様々な工夫を試みた。まず、平面を正方形とすることで、同じ床面積に対しての外壁の長さを最短とした。材料の使用量が少なくコストを抑えると同時に、外部と接する壁が少ないため熱負荷を低減することができ、ランニングコストも抑えることができるためである。構造的にも、正方形平面を基にした単純な架構とすることで、耐震性と低価格を両立させた。しかし、正方形平面では中心部が暗くなりがちである。その問題を解決するためにトップライトを設け、中心部の採光を確保した。さらに、その光が1階にまで届くように、2階床にトップライトと同位置に同サイズのガラス床を設置した。トップライトとガラス床からの光は、採光だけでなく、空間の求心性や1階と2階のつながりをもたらしている。トップライトは開放可能なため、温度差換気による自然通風を行うことができる。仕上げは、施主の希望により、できるだけ多くの部分を自主施工できるようにした。
外装は、雨による汚れに配慮し、庇が突き出た部分を左官壁とした結果、左官壁と木板壁を交互に配する市松模様の立面が出来上がった。
このプロジェクトは、低予算という事情から始まったが、高性能低価格住宅のプロトタイプという汎用性を獲得することが目論まれている。